2020/08/25 19:40


フィラメントは湿気るから注意というのはよく見ます。その通りです。でも購入して手元に届いた時点で、程度の差はありますがフィラメントはすでに湿気っています。封を切っていないので安心と考えている方もおられるかと思います。実は必ずしもそうではありません。多くのフィラメントはこんな理由で製造段階ですでに水分を取り込んでいます。

①フィラメント製造工程で湿気る
フィラメントは押出機から溶けた樹脂が出てきた後、すぐ水槽に入れて水冷して作られます。溶けた樹脂をいきなりかつ直接水に浸けるわけですから当然吸水します。フィラメントは所定の径に調整された後は、基本は乾燥工程がありません。エアで表面に付着した水分を飛ばすくらいはありますが、他はそのまま巻き取られます。水冷で取り込んだ水はそのままフィラメントの中に取り込まれた状態で出荷されることになります。



②製造後の仕掛品保管において湿気る
フィラメントは一旦数十キロもあるジャンボロールに巻いた後、別のメーカーで小巻に加工して出荷されることがあります。ジャンボロールの状態で長期間保管されると大気中の水分を取り込んで湿気ってしまいます。メーカーによっては防湿保管で対策していることもあるようですが、中小のメーカーが多いこともあり、必ずしも万全にケアされているとは限りません。



③パッキング後に湿気る
フィラメントに乾燥剤をいれて脱気でパッキングしても、残念ながら完全に水分は遮断できません。ポリ袋(多くはナイロン・ポリエチレン積層フィルム)は微量の水蒸気がフィルムをすり抜けてしまい、水分がゆっくりと透過してしまう特性があります。ポリ袋に乾燥剤を入れてパッキングしても、湿気るのを遅らせる効果しかありません。完全に近い形で水分を遮断するには、アルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどの使用が必要になります。ナイロンのフィラメントにはアルミ蒸着フィルムでパッキングされているのを見ることがありますが、これはナイロンの吸水率が高く、造形における吸水の影響度合いが大きいためです。

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新品で未開封なのにフィラメントが詰まった、造形外観がブツブツになってしまう、などを経験したことがある方もおられるかと思いますが、それは製造段階での水分が影響している可能性があります。フィラメントは湿気るから注意でなく、乾燥して使うものという認識で使ったほうが良いかもしれません。乾燥の方法はこちらでご説明しています。

Nature3Dは空冷でフィラメントを作っており、フィラメント冷却に水は使っていません。フィラメントは後工程で乾燥させた後、コイル巻き品についてはさらにアルミ袋で水分を遮断して梱包しています。興味があればお試しください。