2020/09/13 00:23


PLA樹脂は1980年代に体内の埋め込み型骨固定材として利用され始めました。1990年代になると生分解性プラスチックとして注目され始め、2000年代には環境負荷軽減、カーボンニュートラルといったところから積極的に利用されはじめました。近年はマイクロプラスチック海洋問題も重なって、各国が積極的に石油系プラスチックをPLAに置き換えだし、需要が急拡大して現在に至っています。

PLAは乳酸の重合体です。乳酸にはL-乳酸とD-乳酸の2種類がありますが、通常L-乳酸でできたポリL-乳酸(PLLA)をPLAと呼んでいます。PLAの融点は実はかなり幅があります。PLAの融点は光学純度によりますが、だいたい150~180℃にあります。光学純度とはPLA(ポリL-乳酸)に含まれるD-乳酸の比率で、D-乳酸が少ないほど融点は高くなります。このあたりのお話の詳細はPLA樹脂のL体とD体についてをお読みください。

PLAは加水分解、熱分解しやすく、ガラス転移点Tgが55℃程度であるため、アモルファスの場合は55℃以下の温度で簡単に変形してしまいます。PLAは加熱によって結晶化しますが、結晶化速度は非常に遅いです。成形時に急冷することで生産性は向上しますが、状態はアモルファスとなり、強度、耐熱性、寸法安定性などの面で信頼性に欠けるものになります。一方で成形時に徐冷、あるいは成形後に加熱することで結晶化が進み、強度と耐熱性は向上します。ただしその分生産性が低下するため、長年普及を妨げる要因となっていました。そのため結晶核剤、可塑剤などによる結晶化促進がまずPLAの技術的課題とされ、このあたりはずいぶん改善されてきています。

ほかにもポリマーブレンドなどによって強度、耐衝撃性改善など様々な改良が進められています。PLAの特長である生分解性を阻害しないよう、PBSなど他の生分解性プラスチックとのブレンドはかなり検討されています。最近は各社からPLAをベースにした様々な生分解性コンパウンド樹脂が上市されており、食品包装材を中心に活発な採用や石油系樹脂の置き換えが進んでいます。