2020/10/29 19:45



フィラメントにたまにMFRという数値が書かれていることがあります。MFRはメルトフローレートの略で、溶融樹脂の流れやすさの尺度です。数値が大きければ流れやすく、小さければ流れにくいという意味になります。MFI(メルトフローインデックス)と記載されることもありますが、意味としては同じです。溶融樹脂を押し出すために必要な力は樹脂のMFRと反比例の関係にあります。MFRが小さいとノズル内で圧力がかかるため、より高い力をかけないと樹脂は流動しません。逆にMFRが高いとフィラメントをより小さい力で送り出すことができますが、樹脂の流れに乱れが起きやすくなります。

最近のフィラメントは高速造形が求められることが多いためか、どちらかというとMFRが高めのフィラメントが多いようです。3DプリンタにおいてMFRの高い低いによるメリット、デメリットをまとめてみます。

◆MFRが高いフィラメント

<メリット>
・より小さい力でフィラメントを押し出せるためエクストルーダーに負荷がかかりにくい
・より高速な造形ができる

<デメリット>
・ノズルやバレル内で流速分布ができやすく、壁面での樹脂滞留からくる樹脂もれや内面炭化が起きやすい
・圧力がかかりにくくなるため溶融ビード断面形状が横に広がりにくく、造形品の積層強度がとりにくい
・吐出後の粘度が低くなりやすいため造形にダレが出やすい


◆MFRが低いフィラメント

<メリット>
・ノズルやバレル内で流速分布ができにくく、壁面付近まで樹脂が流れるため樹脂の滞留が起きにくい
・圧力がかかりやすいため溶融ビードが楕円形状になりやすく、造形品の積層強度がとりやすい
・吐出後の粘度が高くなりやすいため造形にダレが出にくい

<デメリット>
・フィラメントを押し出すのに大きい力が必要になるためエクストルーダーモーターに負荷がかかる
・高速な造形には不向き

樹脂の流動性は温度によっても変えられるので、例えばMFRが高い樹脂であれば温度を下げることで流動性を下げ、デメリットを解消することもできます。ただしMFRが高い樹脂は温度に対する粘度の立ち上がりが急になるため、とてもシビアな温度調整が必要になります。
逆もしかりで、MFRが高い樹脂の温度を上げて流動性を上げようとしても粘度変化がゆるやかなのであまりうまくいきません。やりすぎると樹脂の劣化が進んでしまいます。

フィラメント選びはユーザーレビューだけが手がかりになりがちです。データを公開しているフィラメントは少ないですが、特性の使い分けができれば造形に対しての理解がより進むのではと思います。


<参考>