2021/02/13 10:11


3Dプリンタではフィラメントが使われます。フィラメントはそれ自身がピストンとなってホットエンドに送り込まれ、ノズルで絞られる形で樹脂が押し出されます。従来の押出成形と比較すると、3Dプリンタでは以下が大きく異なっています。

スクリューがない
押出成形機にはスクリューがあります。スクリューがあると装置が大型になりますが、これはデメリットだけではありません。スクリューは樹脂を押し出す推進力を生みだしているだけでなく、高分子のからみあいをほぐして樹脂を可塑化(流動しやすくする)する役割もあります。3Dプリンタにはスクリューがないため、せん断があまりかかりません。そのため機械的な力でなく、主に熱で高分子をほぐして可塑化することが必要になります。

加熱領域が小さい
押出成形ではとても長いバレルを通って樹脂が供給されます。加熱領域がとても長く、溶融してから数分から数十分ほどかかります。一方3Dプリンタではヒートブロックが小さく、溶融してから吐出されるまで数十秒程度しか時間がかかりません。短時間で樹脂を可塑化するには、一般的な押出成形よりも温度を上げる必要があります。

そのため、3Dプリンタでは一般的な押出成形で使われる樹脂よりも高い可塑性が必要になります。樹脂でどうすれば可塑性を上げられるかというと、高分子の鎖が短いもの(=分子量の低いもの)を使うのが一般的な手です。高分子の鎖が短ければ高分子どうしのからみあいも起きにくいので、熱をかけたとき流動しやすくなるというわけです。このためフィラメント用の樹脂はMFR(流動性を示す値)が高めのものが多くなっています。MFRが高ければより軽い力でフィラメントを動かすことができるため、3Dプリンタを軽量化・小型化できたり、プリント速度を早く設定することが可能になります。その反面ノズルやヒートブロックからの樹脂漏れが発生する、樹脂の熱劣化が発生してノズルが詰まるといった問題が起きやすくなるため、マメにメンテナンスを行うことが重要になります。