2021/02/27 12:07
2021年2月でストラタシス社が保有する3Dプリンタについての特許が期限切れとなり、これまで独占されてきたヒートチャンバーの設計を使用する権利が解放されます。これまで3Dプリンタはヒートベッドで特許を回避した設計しかできない状態となっていましたが、制約が取り払われた形で世界中のメーカーが開発販売できることになるため、今後さらに性能が改善された3Dプリンタが市場投入されてくるのではないかと期待されています。
なぜこれまで3Dプリンタにはエンクロージャーがなかったのか
STRATASYS HEATED BUILD CHAMBER FOR 3D PRINTER PATENT US6722872B1 SET TO EXPIRE THIS WEEK
この特許はもともとABSなど収縮の大きい材料を反らずに造形できるようにする意味合いのものです。特許が切れることで何が変わるかというと、基本は安定して造形できますということだけ。それがそんなにすごいことなのかと思ってしまいますが、より使える材料の幅が増えたり、造形品の信頼性が向上したり、造形の失敗を防いだりといった影響があります。広い範囲に及ぶため、とても大きな意味合いを持つと考えられています。具体的には以下のようなことが期待されています。
・エンプラが使えるようになる
・結晶性樹脂(PE, POMなど)が使えるようになる
・造形の失敗が減る(反り、クラック、ベッドからの剥離など)
・造形品の積層強度や信頼性が上がる
・フィラメントをチャンバ内に入れることで吸湿防止ができるようになる
・造形後や造形中にアニールをかけることができる
海外ではDIYで自作している方も見かけますが、商品として高温対応のヒートチャンバーにするのは技術的にそう簡単ではないようです。モーターを高温対応にする、加熱によるプリンタの熱膨張補正対応がいるなどが予想されますが、時間をかけて民生用3Dプリンタにも機能向上のすそ野が広がってくると思われます。3Dプリンタに失敗はつきものですが、それもやがて改善されてスイッチひとつで完成度の高い造形品ができる形に一歩近づくということになりそうです。