2021/05/29 20:55

3Dプリンタでは吐出に考え方が2つあります。盛り付けと塗り広げです。

画像の左が盛り付けた場合、右が塗り広げた場合です。この二つは極端な例で、実際にはどちら寄りか、比率の大小はありますが、中間的なところで条件が決まっていることが多いと思います。上の画像の詳細とシミュレーションの結果はリンク先にありますので興味があればご覧ください。3Dプリンタのビード断面形状を決めているもの

この盛り付けと塗り広げは、それぞれ造形に対する考え方が違います。どちらがいいとか悪いという性格のものではありません。どういう形で吐出されるのが好ましいかは、その造形品に何を求めるかによって変わることになります。整理してみましょう。

◆盛り付けの場合

イメージとしてはハミガキを出すときの状態に似ています。下の層との間隔を広く開けて吐出するため、軽い力で吐出ができます。樹脂は広がらないので丸い形で定着します。ノズルとの間隔が広いので、ノズル頂点部分に付着する樹脂の量が小さくなります。飛び石造形などでの樹脂のキレが良好になるため、複雑な造形を行った際の外観向上につながります。一方で、下や横の層との接触面積が小さくなることから、積層強度はそれほど高くはできません。

丸い形はダレが発生しやすいため、ファンで急冷して崩れないように形を維持することが必要です。プリンタによっては盛り付けでしか吐出ができない場合もあります。チューブが長い大型のボーデン機などです(チューブが抵抗になり、強い力で吐出できないことがあるため)。

◆塗り広げの場合

イメージとしては左官のコテ塗りに似ています。下の層との間隔を狭め、押し付けた状態で吐出します。強い力が必要になるため、ダイレクトエクストルーダー機でしか実現できないこともあります。樹脂は平面方向に広がって長方形に近い形で定着します。下や横の層との接触面積が大きくなるため、積層強度の面では有利です。

一方で、ノズル頂点部分に接触する面積が大きくなるため、樹脂の離れが悪くなる傾向があります。一筆書きであれば問題ありませんが、飛び石造形が多い場合には糸引きが増えて外観が悪化することもあります。長細い形状になることと、高い圧力がかかっておりシアシニング効果で吐出後の粘度が急激に上昇することから、ダレ止めが効きやすい傾向があります。場合によってはファン送風が必要ない場合もあります。その場合はノズルやベッドの熱を使って適度に造形品を保温することができ、ゆっくりと分子拡散させることによって積層強度をさらに高めることもできます。