2021/07/04 11:31

6月にPLA樹脂の世界大手NatureWorksがタイに新工場を建設すると発表がありました。場所はタイ北部のナコンサワン県で、生産能力は7万5千トン/年を見込んでいます。この案件はタイ投資委員会(BOI)によって申請が承認され、税制恩典を与えられる形となっています。


BOIは投資政策の策定、タイへの投資案件の認可や恩典の付与を担う、タイ工業省傘下の投資誘致機関です。日本にも東京、大阪にもオフィスを設置しています。2015年から今年の3月までにBOIが承認し、税制恩典を付与したバイオプラ案件は合計21件で、合計投資額は310億バーツ(約1,070億円)を超えました。タイは国としてバイオプラ関連事業の成長を促進するため、政府による強力な支援を行っています。

タイにおいて、PLA樹脂ではTotalCorbion(生産能力 7万5千トン/年)、PBS樹脂ではPTT MCC Biochem(タイのPTT Global Chemical PCLと三菱化学の合弁会社、生産能力 2万トン/年)がそれぞれすでに製造を行っています。これらのメーカーもBOIからの認可、恩典付与を受けたものです。

タイは農業国として知られていますが、キャッサバ(3,170万トン:2018年度実績)、サトウキビ(6,720万トン:2018年度実績)、などバイオプラ合成に必要な原料の主要な生産国でもあります。これらの原料を発酵させることで乳酸、コハク酸などのバイオモノマーを得ることができ、重合によってバイオプラスチックを作り出すことができます。そのほかにもエタノール、バイオガス、クエン酸やソルビトールといった食品添加物を得ることもできます。石油化学の場合は原油から燃料や樹脂が作られますが、これがバイオ原料に置き換わった形で、バイオ原料から派生する様々な製品が作られており、すそ野の広い産業になりつつあります。



タイは実は世界でも有数のバイオプラ輸出国で、PBS樹脂製造プラントが世界ではじめて作られた国でもあり、PLA樹脂輸出は世界2位です。タイのバイオプラスチック分野は年率10%という高い数値で成長しています。


しかし高成長しているにもかかわらず、これらのバイオプラスチックは主にヨーロッパ向けの出荷に回されており、タイ国内ではバイオプラスチックはほとんど流通していません。タイでのプラスチックは年間消費量200万トンに対し、バイオプラスチックの割合はわずか1%です。安価になってきているとはいえ、バイオプラスチックの価格は、従来の石油系プラスチックの2~3倍します。ヨーロッパ諸国は資金力があるためこのような価格でも受け入れられていますが、タイではまだ本格的な導入が難しいという現状もあるようです。タイでもパンデミックの影響により使い捨てプラ使用量が増えてしまい、使い捨てプラの対策が課題となっています。今はバイオプラは輸出優先となっていますが、やがて自国の対策にも使われだすと思われます。

参考

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