2022/01/30 11:12

導電性フィラメントを扱う際に、体積抵抗や表面抵抗という言葉が出てきます。言葉だけだとなかなかイメージがつかみにくいです。少し整理してみましょう。

体積固有抵抗
対向する二つの面上に置いた二つの電極間に直流電圧を印加します。この電圧を電極間に流れる電流で割って、単位体積の立方体に換算した値です。


体積固有抵抗では表面に沿って流れる電流は含めません。試験片と電極との界面で起こり得る分極現象(表面に電荷がにじみ出たようなことになる現象)は無視します。体積固有抵抗は物体の内部を流れるときの抵抗を示しています。試験片の断面を均一として扱った時、試験片を通過する電流の流れにくさという意味合いです。一般的に言われる「抵抗値」はこちらを示していることが多いかと思います。
ほとんどの場合は印加電圧に関係なく、オームの法則に従い、断面積に反比例し、長さに比例します。材質と温度で決まるその材料固有の値なので、「固有」という言葉がついています。体積固有抵抗の単位はΩ・cmになります。

この体積固有抵抗ですが、分野によって用語は様々です。電気の分野では「電気抵抗率」、物理の分野では「抵抗率」、電子分野では「比抵抗」、材料分野では「体積抵抗率」や「体積固有抵抗」と呼ばれており、この辺りも混乱が起きやすいところです。EV30Sでは材料特性を示すという意味で「体積固有抵抗」という言葉を使っています。

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表面抵抗
試験片の面上に二つの電極を置いた状態で直流電圧を印加します。この電圧を電極間を流れる電流で割って、表面上の正方形の面に換算した値です。シート抵抗といわれることもあります。


表面抵抗は、その試験片の表面状態に大きく関係します。材質以外に、表面層に付着する水分(湿度が関係しやすい)、表面の汚れ、粗さやうねりなども影響します。また、ほとんどの場合、測定結果は多少体積抵抗成分が含まれるため、純粋な表面だけの抵抗は正確には測定できません。表面抵抗はおおよその測定となります。こちらは材料固有の数値ではないため、「固有」という言葉はついていません。単位はΩ/□(読みはオームパースクウェア、抵抗値 Ω と区別するためにこの表記が用いられる)です。

表面抵抗は文字通り物体の表面を流れるときの抵抗です。静電気は物体の表面を通って起きるため、ESD対策(静電気放電対策)を考える際は主に表面抵抗が使われます。静電気を発生させたくない場合はなるべく低い表面抵抗のものを、ESDが起きた時にに急激な電圧変化を生じたくない場合は、なるべく高い表面抵抗のものを選択することが多いです。

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