2022/02/04 22:04

つい面倒でサボりがちですが、ノズルのクリーニングは重要で、これを定期的にやるかやらないかで造形の出来はかなり変わってきます。一体クリーニングしないとノズルはどうなるのでしょうか?

3Dプリンタでの樹脂の流れと一般的な配管内の流体の流れにおいて、大きな違いの一つは流れのスケールにあります。流れのスケールというのは微小流量を扱うときによくでてくる話で、流量が微小になり、スケールが小さくなるほど表面の影響が大きくなってきます。ある部屋を考えた時、部屋が狭くなるほど壁の占める割合が大きくなるのと同じで、流体は狭い空間を通る場合は壁の影響をより強く受けるということになります。そのため、流れのスケールが小さくなるほど表面に関係する力、例えば摩擦力、表面張力、粘性力といった力が支配的になっていき、逆に重力や慣性力といった体積に関係する力の影響は小さくなります。

その中でもノズル内の流動で影響が大きいのが摩擦力です。樹脂は高温にして溶かすとサラッと流れるようなイメージがありますが、実際のところは液体でも摩擦の影響を強く受けます。このため、3Dプリンタ用の樹脂では樹脂と金属との間で滑りやすくする「滑剤」というワックスのような成分が入れてあることがあります。滑剤は樹脂の表面に移行しやすい性質があり、浮き出して金属と接することで摩擦の抵抗を減らしてくれます。

ノズル側でも摩擦を減らすことは重要で、最近はkaikaに代表される高品質ノズルでは内面の仕上げが良好になっています。メーカーによってはメッキなどでコーティングして滑りを改善しているノズルもあります。


プリントしやすくするため、できるだけノズル温度は上げる設定にすることが多いですが、樹脂は流動性を上げれば上げるほど、より中心ばかりが流れるようになります。


その一方でノズル壁面の流れは緩やかになるため、樹脂は壁面付近で滞留を起こして次第に熱劣化してしまい、せっかく摩擦を小さく仕上げてあるノズル内面に炭化物や汚れを作ってしまうことがあります。こうなると摩擦抵抗が増えてしまい、流路も狭まって流れが悪くなるので、それを補うためにさらにノズル温度を上げる必要があり、ノズル温度を上げることでさらに壁面付近の樹脂の滞留が増える…。という悪循環が起きてしまいます。この悪循環をリセットするためにはノズル内にできた炭化物を除去しなければなりません。これがノズルのクリーニングが重要な理由です。

もう一つ見落としがちなのが、炭化物は局部的に成長してくることがあるという点です。局部的に突起ができると樹脂の流路を乱してしまい、高分子鎖の引き伸ばしに偏りができ、これが収縮の偏りにつながってしまいます。図は3devoというフィラメント押出加工の時の話ですが、3Dプリント時でも全く同じことが言えます。


このように、ノズル内の汚れは見えないながらも、実はいろんなところに影響してくるため、異常がなくてもマメにクリーニングをするのはとても重要です。

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