2022/04/01 22:10


3Dプリンタでは熱のムラが起きやすいといわれます。どんな要素が関係しているのでしょうか?代表的なものが以下の6つです。



①吐出ビードから外気への対流熱伝達
②下層ビードへの熱伝導
③ベッドから造形品を通しての熱伝導
④ベッドの熱
⑤ベッドから外気への対流熱伝達
⑥エクストルーダーの熱

3Dプリンタでは造形品の上に溶融ビードが定着します。その溶融ビードの熱は下の層や隣り合うビードを通して造形品全体に伝わり、最終的に外気を通して逃げていきます。このあたりは複雑で、造形モデル、XY面内の位置、積層の高さ、その時の気温や気流などによって、時々刻々①~⑥のどれが優位になるかが大きく異なってきます。熱の逃げ方が違えばひずみにムラができるので、収縮、反り、クラックなど発生の仕方も変わるというわけです。3Dプリンタで造形の出来栄えがその時々によって変わってくるのは、こういうところが大きいと考えられています。

このうち熱伝達に関係する①、⑤は外気を遮断して保温しておけば変化がマイルドになります。エンクロージャーを使うと造形が安定するのはこれが理由です。

主に熱伝達の①、⑤は熱が逃げる要素で、逆に②、③は造形品に熱をもたらしてくれる要素です。②+③ > ①+⑤になると熱は造形品にため込まれる方向となり、熱のため込みが適度であれば造形は安定します。逆に②+③ < ①+⑤となると熱は外気に奪われてしまい、温度ムラが生じやすく、造形失敗につながりやすくなります。一般的に熱がため込まれやすいのは、肉厚のモデルを早めのスピードで造形した時です。逆に薄壁や飛び石造形のモデルなどは表面積が大きくなるため、条件を調整しても熱はため込まれにくいです。エンクロージャーなど条件以外の装置側での対応が有効です。

④と⑥は熱源です。④のベッドの熱はよく見落とされますが、ベッドは面内の温度分布が均一ではありません。もともとの熱源にムラがあるということです。造形品が細長いほど強くベッド加熱ムラの影響を受けるということは知っておく必要があります。⑥はシリコンカバーを取り付けることで影響を少なくすることができます。

上の文献には書かれていませんが、もちろん造形品への送風も造形に影響します。特に幅広形状の造形を行った時にクーリングファンの角度を変えたり、ファン回転数を落としたりすると造形が改善した経験がある方もおられるかと思います。本当にちょっとしたことで樹脂は急冷され、造形に影響を及ぼします。

スライサーの調整は感覚的で個人スキルによるところが大きいですが、熱のムラをどう小さくするかというのが安定造形のための考え方のひとつです。モデリングができるようであれば3Dデザインを見直して、熱の伝わり方にムラが起きやすい箇所を修正するのも一案かと思います。