2022/06/11 09:25
PLA樹脂は年々需要が拡大しており、2022年現在、世界で最も使われている生分解性樹脂となっています。PLAは3Dプリンタ以外では日本ではあまりなじみのない樹脂ですが、世界ではEUや北米を中心に、石油系使い捨てプラ製品のPLA代替が盛んにおこなわれています。しかし役目を終えたPLA製品の廃棄物をどう処理するかは議論が分かれるところとなっています。
まずはリサイクルが考えられますが、世界で使われるプラスチック製品全体で見た場合のPLAが占める割合はごくわずかです。PLA製品を回収するための仕組みがまだ整備されていません。リサイクルしても回収コストがかかり、結果的にコストに合わなくなる可能性があります。PLA製品の最も大きな用途は食品包装材・包装容器ですが、使われ方から汚れの付着が大きいものが多く、洗浄再生しても外観や特性はバージン材比較でかなり劣ることになってしまいます(参考:PLA樹脂は何に使われている?)。
PLAはコンポストでの生分解処理が可能です。コンポスト処理は微生物の働きを活用して発酵・分解させるもので、生ごみや下水汚泥などと同様に処理し、土に還します。化学的なプロセスを経ないので自然に近い処理方法です。しかしコンポストを行うにはPLA樹脂製品とそれ以外の樹脂の製品を確実に選別するか、もしくは最初から混入が起こらない仕組みを構築する必要があります。これが不十分だと分解しないプラスチックが混ざった堆肥を作ってしまうことになり、かえって環境にはよくありません。また、PLA樹脂製品にはポリマーだけでなく添加剤も配合されています。コンポストで添加剤も分解するとは限らず、結果的に堆肥の質を落としてしまうことも考えられます(参考:PLAの生分解メカニズムについて)。
埋め立て処理もPLA製品の処分には好ましくない方法です。よくウェブサイトにもプラスチック材料が分解する要する年数が書かれていることがありますが、ある特定条件下での加速試験から計算上で出している年数で、実際に検証したわけではありません。埋め立てられたプラスチック製品は一部分解するものの、実際には半永久的にそのままの形で残ると考えられています。これはPLAでも同様で、PLAは60℃以上の温度がないと生分解が進みません。埋立地ではPLAの分解はほとんど起こらない可能性があります。
残念ながらPLAは生分解性ではあるものの、これを活用した廃棄処理は今のところ大規模にはできていないというのが実情です。今後生分解性プラ普及に伴い新しい回収廃棄の方法が確立される可能性もありますが、現時点では従来の石油系プラ同様、回収しての焼却廃棄が適切な方法かと思われます。
どうしても自然環境中に残置して生分解性を活かした使い方をするのであれば、基本スタンスは消極的かつ少量であるべきかと思います。
PLA造形品についても生分解性だからと安易に自然環境中に投棄するのは避けた方がいいでしょう。仮に分解したとしてもPLAフィラメントは多くは造形用に改質されていて、石油由来の分解しない添加剤が使われていることも多いためです。特に記載がなければPLAフィラメントは生分解性を考えて作られてない、もしくはメーカーが生分解用途では使ってほしくないと考えている、と思った方が無難です。
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