2023/04/02 11:54

従来よりプラスチック製品の着色には染料や顔料が用いられてきました。染料を使うときれいな半透明の色合いになります。分散も良好です。しかしあまり濃い色はつけられません。多量に添加するとブリード(配合されている添加剤などがポリマー表面に移動する現象)が起き、経年劣化すると色移りしやすくなるという欠点があります。


そのため、一般的にプラスチック製品の着色には染料よりも顔料が広く用いられています。こうしたプラスチックの着色用の顔料としては、従来からカドミウム、クロム、鉛などの重金属化合物が含まれる無機顔料が広く使用されてきました。こういった顔料は発色性がよく、きれいな色が出せます。価格も安価で耐候性も良好という特徴があります。


しかしご存じの通り、重金属は有害性からくる人体への影響、環境汚染につながるとのことから使用が避けられるようになってきています。いまでも一部には画具(絵の具)などでもこれらの顔料は使われています。美術ではこの色でないとこの色彩が出せないということもあり、代替が難しいことも多いためです。最近は画具では有害性のある顔料が含まれている場合、製品に表示を行うように変わってきました。


大量生産されるプラスチック製品ではそこまで色についてこだわる必要はなく、どちらかと言えばより安全性が求められます。実際に手に取ったり、場合によっては口に直接入れる用途もあるため、プラスチック製品においてケミカル的に安全であることはとても重要な要素です。

現在プラスチック製品の顔料は、化学合成された有機顔料が使われることが増えています。キナクリドン、フタロシアニン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、ペリレンなどが代表的な物質です。しかし、これらの有機顔料もまったく問題がないわけではありません。最近は環境リスクの評価も進んできていますが、発ガン性や環境ホルモン問題など人の健康や環境汚染に対する影響が懸念されるものも中にはあります。

生分解性プラスチックは、長い年月をかけて微生物によって分解され、最終的には二酸化炭素と水にまで分解されて自然に還っていきますが、その着色についても人の健康に対して無害であり、環境汚染を引き起こすおそれのないことが強く望まれています。

最近は、天然色素を生分解性プラスチック製品に使おうという動きも出てきています。天然色素はクチナシやウコンといった色素に代表されるもので、従来より食品添加物としても利用されています。このため、例えばフォークやスプーンのように、人や食べ物と直接接触する製品に使用したとしても安全であり、環境汚染を引き起こすおそれも少ないと考えられています。確かに長期的には耐候性などは有機顔料に劣りますが、一回で使い捨て、あるいは複数回で廃棄となる製品にとっては好ましい用途です。