2023/04/10 12:24


「生分解性プラスチック」という言葉だけを聞くと、なんとなくどれも同じようなものに思えるところがあります。プラスチックの名前は大文字のアルファベットが並んだだけなので、名前だけを聞いてもどんなものなのかあまりイメージがわかないのも無理はありません。じつは生分解性プラスチックはどれも同じでなく、プラスチックによって分解のしやすさがあります。難しいところは除いておおざっぱに書くと、下記のような感じです。

1. 大規模コンポスト設備で分解できるもの
2. 家庭用の簡易なコンポスト機で分解できるもの
3. 土に埋めて分解できるもの
4. 川などの淡水環境で分解できるもの
5. 海などの海水環境で分解できるもの

下に行くほど微生物が少ない環境で、分解の難易度は高くなります。

1に該当するのがPLA(ポリ乳酸)です。生分解はするものの、それには人為的に環境を作ってやる必要があるというプラです。PLAは最近世界中で使われており、石油系使い捨てプラ代替品としてのスタンダードになってきています。食品包装用フィルム、飲用カップ、食品用トレー、フォーク、スプーンなどが代表的な例です。

PLAはたしかに欧米を中心とする海外でははやっているのですが、日本で採用の動きはそう大きくありません。理由はいくつかあるのですが、生分解を活かした展開がしにくいということが一つの要因としてあるかと思われます。日本でゴミはほとんどが焼却処分となっていて、海外のような大規模コンポスト施設がありません。コンポスト施設がなければ他の石油系プラ同様に燃やすしかなくなってしまいます。日本では使い捨てプラ対策にバイオPE、バイオマス混練プラが多いのも、この辺りが理由である気がします。PLAは生分解性プラとしてでなく、バイオマスプラとしての側面が強くなってきています。

3はPBS(ポリブチレンサクシネート)が該当します。あまりなじみのない名前のプラスチックですが、農業用ではよく使われます。土の乾燥や雑草の抑止を目的として、マルチフィルムという薄いシートが畑のうねにかけられますが、この用途で用いられる代表的なプラスチックです。マルチフィルムは作物の栽培が終わった後で毎回回収して廃棄しなければならず、かなり労力がかかります。マルチフィルムに生分解性があれば、耕運機などで畑にすき込んでしまえばあとは分解してくれるのでラクだというわけです。

今開発が進められている生分解性プラは5を目指しているものが多いです。5ならどんな環境でも分解できるためです。でんぷん変性樹脂、PHBHなどが代表的な例です。酢酸セルロースも5に該当します。5に該当するプラは数年単位で分解し、自然環境に戻っていくという設計のものが多いです。

たしかにプラスチックゴミ対策としては好ましい特性ですが、世の中のプラスチック製品すべてを5の樹脂に置き換えることはできません。使っていくうちに分解してしまうとまずいことも多いわけで、誤った用途で5に該当するプラスチックが使われるとトラブルを起こすこともあります。5は商品ライフサイクルが短いタイプの使い捨て製品や、自然環境中の使用が前提で、かつ回収が難しい製品などが向いています。これらはすでに実用化が始まっており、ニュースなどでも目にしますが、まだ課題も残っています。分解開始時期と速度の制御がその一つです。プラスチック製品が自然環境に残置された際に適切に分解されるよう、生分解するタイミングやスピードを制御するスイッチ機能を持つタイプの開発が大きなテーマになっています。