2023/05/01 10:16

PLA(ポリ乳酸)樹脂は世界全体で普及が進んでいるバイオプラスチックで、完全バイオマス由来、かつ生分解性を有することが特徴です。


2022年のデータでは世界全体でのバイオプラスチックの生産能力は222万トンであり、そのうちPLAは20.7%です。世界全体でPLA樹脂は約45万トンの生産能力を持っていることになります。少し前まではPLA樹脂は生産拠点が限られており、高まる需要に対応できない状況が続いていましたが、各社のプラント新設で状況が改善されてきました。今では数あるバイオプラスチックの中でもPLA樹脂は最大の生産能力となっています。


日本の場合、PLA樹脂輸入量はここ10年で見ても横ばいで、おおむね5,000トン/年前後で推移しています。すでに日本でも使い捨てプラに関する規制強化が始まっていますが、PLA樹脂についてはそれほど大きな動きがあるようには見えません。理由はいくつか考えられますが、日本の場合は主に再生プラスチック、バイオベース原料を使ったプラスチックなどの利用でプラスチック使用量削減、プラスチックゴミ対策が行われていることが上げられるかと思われます。PLAは生分解性プラスチックの中では比較的生分解性が低く、一般的に土壌では分解しにくいためコンポスト施設で処理を行うことが必要ですが、国内だとこういった対応がとりにくいということもあるのかもしれません。


一方輸入単価で見ると、この10年で約2倍、2018年からの直近3年間に限定すると約1.8倍となっており、近年急に価格が上昇していることがわかります。直近でのウクライナ戦争による原料高、米国金利政策による円安の影響もありますが、価格上昇はすでに2018年ごろから起きていることであり、それだけが原因ではなさそうです。世界全体でのPLA需要拡大に対して国内での需要が少ないため、どうしても量の観点から後回しになり、価格面で買い負けるといったことが起きているのかもしれません。

たしかに生分解性樹脂を導入すればプラスチックごみ問題や石油系プラスチック削減問題がただちに解決できるわけではありませんが、日本が生分解性プラスチックの使いこなしに遅れをとっていることも事実のようです。今後世界的に環境意識の高まりから、既存のプラスチック使用に対して厳しい目が向けられることも予想されます。今後この状況が変わっていくのかどうか、長期的な視点で注視していきたいと思います。

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