2023/05/27 10:13


PBAT樹脂を加熱して溶かし、伸ばしてみる実験をやってみました。


PBAT樹脂は融点115℃です。融点が低いので市販の加熱器具でも簡単に溶かすことができます。


今回はグルーポット(ホットメルトを溶かすための器具)とシリコン容器を使いました。グルーポットはスイッチを入れると150℃まで温度が上がります。加熱されたグルーポットの上にシリコン容器を置き、そこにPBAT樹脂のペレットを入れて溶かしました。


PBAT樹脂を投入するとすぐに溶けていきます。


静置して1分ほどでペレットがすべて溶けました。PBAT樹脂は常温だと結晶化しているので白いですが、溶融すると結晶がほぐれてアモルファス状態になるので透明になります。ペレットの事前乾燥はしていませんが、この樹脂は加水分解はしないこともあってか、溶融してもそれほどドロドロになったりパチパチ音が出る様子はありません。


加熱状態でスプーンで引き伸ばしてみました。それほど力を入れなくてもモチ状によく伸びます。


グルーポットから取り出したところ。冷まして融点を下回ってもすぐに白くなるわけでなく、ある程度の時間透明な状態を維持しています。結晶化速度が遅いためだと思われます。


ある程度指で触れる温度になった状態で引き伸ばしてみました。一般的な樹脂だと固化が速いのでこういうことはできません。おもしろい特性です。適当に引っ張っただけですが急にドローダウンすることもなく、わりと均一に伸びてくれています。PBATがフィルムに向いているというのも納得な感じです。

PBATは3Dプリンタ用にも使われています。結晶性樹脂なのに3Dプリントが成立するのはなぜかと思っていましたが、結晶加速度が遅いことと、軟質であることから造形中にひずみを逃がすことができるので、3Dプリント用途にも使えているのかもしれません。


完全に固化すると軟質ながら強靭な感じになります。弱いという感じでなく、しっかりした硬質ゴムのような感じです。


試しに結び目を作ってもきつく曲げてみましたが、折れてしまうことはなく、ほどいてもほぼ元通りに戻ることがわかりました。