なぜ結晶化の進み方を半結晶化時間というもので表現するかというと、高分子材料の結晶化度は限りなく100%に近づくものの、完全に100%にはならず、結晶化は理論的には無限の時間がかかることがあるからです。高分子材料の結晶化は、高分子が特定の並び方に整列する過程を指しますが、この過程が完全に終了するには非常に長い時間がかかります。そのため、熱分析の発熱ピークの面積の半分に到達するまでの時間を半結晶化時間として、これを結晶化度速度の指標にしています。

PLAのアニール温度は基本的にガラス転移点(Tg)以上、融点(Tm)未満であれば結晶化が進みます。ただし温度があまり低すぎると結晶が成長せず、かといって温度が高すぎると結晶核が形成されません。温度は低すぎても高すぎても結晶化に時間がかかります。経験的にTgとTmの中間程度の温度が結晶成長と結晶核生成のバランスがよく、結晶化速度が速くなることが知られています。この温度域でアニールするのが時間的に有利です。

参考：PLA樹脂の結晶化 アニール時に起きていること