2024/01/20 22:55


昨年末に在庫切れとなっておりました導電性フィラメントを年始から作り込み、BASEショップの在庫を補充しました。よろしければご利用ください。

これまで導電性フィラメントは1号機にて加工していましたが、今回は条件を出し直して2号機に切り替えました。1号機はまだまだ健全ですが、一部に経年で摩耗も進んでいる兆候もあり、若干の懸念もあります。まだ健全なうちに2号機での条件調整を進めておきたいと考え、今回は2号機での生産としました。


条件調整に手間取りましたが、3日ほどかけてフィラメント径、外観ともに良好な状態に追い込むことができました。これが初期の画像。口金での目ヤニ、フィラメント肌荒れがあります。


これが調整後。口金部分の目ヤニは消失し、フィラメントの肌がきれいになりました。

そもそもフィラメントの押出って何が難しいの?具体的にどういうところが難しいの?という方も多いのではないかと思います。この辺りはいろんな考え方がありますが、当方の意見としては、その樹脂がフィラメント用として実績があり、かつその樹脂に固定して加工している分にはそれほど難しくはないかと思います。

ですが、当方では様々な樹脂を扱います。その樹脂は押出で扱う上でどういうクセがあるのか、条件をどのような方向性で調整するかを見抜く必要があります。それは樹脂の出方や外観などで判断する必要があり、出てくる樹脂がラクで理想的な状態なのか、ストレスがかかっていてあまり好ましくない状態なのかを都度見極めないといけません。

もちろん標準的な加工条件はありますが、その日の気温によってもずいぶん振られます。樹脂の状態を見て加工条件は都度微調整をかけています。単純にフィラメント径だけを調整しているのではなく、口金から出てくる樹脂の状態、フィラメントの肌の状態なども加味して調整をかけているということです。さらに新規の材料開発をやる場合には材料処方の変更などもあり得るため、無数の要因を考慮に入れながらもベストと思われる打ち手を講じる必要が出てきます。

当然ですが、押出機を動かしている間は樹脂はどんどん流れていきます。リアルタイムで流れてくる樹脂の状態を見て条件調整をどうすればいいのか、あるいは条件調整では無理なので一度停止して金型を変える必要はないのかなどを都度的確に判断しないといけません。判断が遅れたり、判断ミスがあると延々高価な樹脂、せっかく調合した樹脂を浪費してしまいます。その樹脂や押出加工についてある程度知っていないと具体的な調整に落とし込むことができず、ひたすら使い道のない不良品を廃棄する手間に追われることになります。

当然最初からうまくできるわけはないので、ひたすらドロ臭く失敗しながら学んでいくことになります。このあたりは3Dプリンタの使いこなしに通じるところもあります。

付帯設備含め一式数千万円もするような、完成されたフィラメント押出の量産設備で大量に加工を依頼するのであればそれほど苦労はないのかもしれません。ただ委託加工費を考えた場合、それはビジネスとして成立させられるのか?というとまた別の話です。見込みが薄い場合は試作段階でも委託加工について承認が下りない場合も多いことでしょう。

だいたい多くのフィラメント試作や小ロット生産では使いこなしが難しいながらも小型安価な押出機が開発の現場で活用されているわけで、ここにまつわる悲喜こもごもの話は企業内にとどまり、ほぼ表には出てきません。その情報は決してネット上では見ることはできませんが、各開発の前線では苦労しながらも様々な検討が日夜行われているのだと思います。