2024/03/06 11:00


酢酸セルロース樹脂は海洋生分解プラとして位置づけられていますが、温度が低く微生物の少ない深海でも分解は進むのでしょうか?

東京大、海洋研究開発機構などのチームが、生分解性プラスチックは水深5000メートルを超す深海でも微生物によって分解されるとする研究結果を発表しました。使われた生分解性プラスチックはPHA,PBS,PBATなどですが、その中に酢酸セルロースもあります。


テストは日本の太平洋沖で行われています。深度を変えた各地点に生分解性プラスチックのサンプルを設置し、一年経過後に引き揚げて、状態変化の確認が行われました。


この研究では様々なデータがとられていますが、これが酢酸セルロースに関する部分の結果です。

重量減少率とは、サンプルを沈める前と引き揚げたときの重量の比で、数値が高い方が分解が進んでいるということを示しています。セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロースとも深海で分解が進むことがわかりました。深海では分解速度は緩やかになることがわかります。

酢酸セルロースはDS値(酢酸への置換度を示す値)が小さい方が分解しやすいといわれています。セルロースの水酸基をすべて酢酸に置換したのが三酢酸セルロースで、DS値は3です。セルロースはまったく酢酸への置換はされておらず、DS値は0になります。酢酸セルロースはこの中間で、今回使われたのはDS値が1.5のものです(工業的に使われる三酢酸セルロースはDS=2.9、酢酸セルロースはDS=2.5が多い)。

一般的にDS値が高い三酢酸セルロースに生分解性はないとされていますが、これに合致した結果となっています。

興味深いことに、深海での重量減少率はセルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロースとも同程度で、DS値にそれほど左右されていないことがわかります。酢酸セルロースはアルカリ条件下で分解が進みやすいとされていて、弱アルカリである海水中に浸漬されることで起こる脱アセチルにより、深海でも長期間浸漬されると分解が進むことを示唆しています。

これらの結果は、酢酸セルロースなどの多糖のエステル誘導体が海洋生分解性プラスチックとして大きな可能性を秘めていることを示していると書かれています。

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https://www.themarinediaries.com/tmd-blog/discovering-the-value-of-the-invaluable-deep-sea