2024/06/02 20:02
有機溶剤に関する法令は、主に労安法と消防法が関係します。働く環境の安全衛生面において、有機溶剤を扱う場合の規則を決めているのが労安法の有機溶剤中毒予防規則で、略して有機則と言います。有機溶剤は蒸気を吸引したり、液体に触れたりすることで健康被害の影響が懸念されるため、取り扱いの方法が有機則で細かく決められています。会社でもよく有機則という言葉を耳にする方は多いのではないかと思います。
有機則の中で、有機溶剤は毒性と蒸発速度から有害性が区分けされており、最も有害性の高いものが第1種有機溶剤、中程度のものが第2種有機溶剤に、低度のものが第3種有機溶剤として指定されています。ざっくりいえば、有機則対象の溶剤であれば有害性が高く、有機則対象外であれば有害性は低いということができます。
今回は生分解性塗料の溶剤組成検討で、溶剤全体に占める有機則対象溶剤の比率を33%にまで下げました。残り66%は有機則対象外で、毒性の低い溶剤となっています。
かなりの量で筆塗り作業を行っても、臭気はほとんどなくなりました。もちろん依然換気は必要で、塗料全体として有機則から外れているわけではありませんが、それでもかなり安全性が高くなっています。
一般的なラッカー塗料の樹脂成分はニトロセルロースとアルキド樹脂で、塗膜に生分解性はありません。また、ラッカー塗料に使われているのはキシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノールなどで、溶剤成分のほぼ100%が有機則対象の溶剤です。劇物指定の溶剤も使われており、全体として毒性は高い組成になっています。
これに対して、今検討している生分解性塗料は酢酸セルロースを主成分としています。酢酸セルロースはこれまでご紹介してきた通り、生分解性のある素材です。さらに、溶剤の毒性を下げるため、一部をエタノールなど有機則対象外の溶剤に置き換えようとしています。今のところ、溶剤全体に占める有機則対象溶剤の比率は30~50%程度になりそうな感じです。
生分解性があり、かつ作業上の安全性も高い塗料とすべく、今後も検討していきたいと思います。