2025/02/07 12:19

生分解としての酢酸セルロース樹脂が市場に投入されてから、もう4年ほどが経ちます。
酢酸セルロース樹脂そのものは、特に目新しい樹脂ではありません。地味ですが、昔からメガネフレームとか、ドライバーの柄の部分とか、女性用の髪止めなどに使われてきました。樹脂の親水性からくる手触りや顔料や染料を添加した時の発色性の良さから、よく手に取るものや意匠性をもつ製品には最適です。

女性用の髪止め(非生分解での酢酸セルロース樹脂)
ところが旧来の酢酸セルロース樹脂は、生分解性は特に考慮されていませんでした。これを可塑剤を変えることで生分解性樹脂にしよう、という方向性にしたのが生分解性の酢酸セルロース樹脂です。
樹脂は一般的に、大型の成形機を持つ工場、研究所などでしか使われることはありません。樹脂というのは高温で熱をかけて溶かし、かつ強い力で押し出して加工することが必要になるので、ほとんどはメーカーさんが加工してくれた製品としての形でしか樹脂を見ることはできないわけです。
いくら「生分解性樹脂を使ってみたい!」とユーザーが考えても、身近な製品として提供してくれなければ使うことはできません。生分解性樹脂は発展途上で流通量が少ないため、今のところはごく限られた用途を通してしかユーザーはアクセスできないということになります。
ところが酢酸セルロース樹脂は、他の生分解性樹脂と一つ異なる点があります。毒性が低い溶剤で溶かすことができるという点です。
これによって酢酸セルロース樹脂をコーティング剤や塗装などに使うことができます。特別な設備がなくても、DIYで、家庭でも生分解性樹脂を使うことが可能です。必要なのは酢酸セルロース樹脂、溶剤、簡単な器具だけ。これはおそらく生分解性樹脂の中では酢酸セルロース樹脂にしかできないことで、大きなメリットの一つと言えます。
最近は生分解性樹脂のニュースがネットでもよく出てくるようになりました。見ていると毎回大きな反響があるのですが、まだ普及の途上であることから、それらの製品をユーザーが手に取る機会はかなり小さいと言えます。
酢酸セルロース樹脂であれば、ペレット原料をそのままでユーザーが自由に使うことができ、自由にアレンジすることも可能です。
もちろん工場で行われる従来のものづくりも重要ですが、クラフト用途として一般ユーザーが使いこなすことができる、草の根レベルでの生分解性樹脂発展の可能性が、酢酸セルロース樹脂にはあると思います。