2020/12/18 18:37


2020/12/17日(木)19:00-20:30、ファブラボ品川様主催の「樹脂会」にお招きいただき、オンライン会議の形でNature3Dがゲスト登壇させていただきました。


当日はフィラメントを作り始めた経緯、フィラメントの紹介、どうやって作っているかなど簡単にお話させていただきました。



Nature3Dは2014年に3Dプリンタを使い始めました。当時一般向けに3Dプリンタが出始めて10万円を切り始めたころで、これなら何とか使えそうだと思って購入しました。ところが実際にやってみると、かすれる、反る、定着しない、詰まる…。という感じでなかなかうまく使いこなすことができませんでした。次第に使わなくなり、15年ころには3Dプリンタが一時期お蔵入りになってしまっていました。

ところが15年の年末に、偶然フィラメントを作る装置が安価で販売されているのを見つけました。自分でフィラメントを作れば自由に改質、改善できる可能性があるのではないかということと、市販フィラメントでできることの限界もあることがわかり始めていたこともあり、できるかどうかわからないけど一度やってみようかと思い、海外から小型押出機を購入して使い始めました。これがフィラメントを作るようになったきっかけです。


作っているフィラメントについてもご紹介させていただきました。上段の2つ(LFY3MLFG30)がPLAフィラメントです。最初にこの2つを作り始めました。一般のPLAは耐熱温度が60℃くらいしかありませんが、このPLAは造形品をオーブンに入れてアニール処理というオーブンでの加熱を行うことで耐熱温度を上げることが可能です。

LFY3Mは後加工性良好としてご紹介しているPLAです。一般的なPLAは研磨や接着がやりにくいですが、サンドペーパーで研磨したり、瞬間接着剤が使えたりします。反りも小さくシャープに造形できるという評価をいただいています。

LFG30は強度と高耐熱を出すことに特化したPLAフィラメントで、ガラス繊維30%入りのものです。写真はテスト的な使い方として、ダイレクトにモールドを3Dプリントして138℃低融点合金を鋳造した例になります。

左下はW418という名前でウッドフィラメントです。52%木粉を入れてあります。一般的にはこれほど木粉を添加すると3Dプリンタで使える流動性は出せませんが、ベース樹脂を高流動に改質し、3Dプリンタでも使えるようにしてあります。木彫り風の造形ができるということで人気をいただいています。

右下がEV30Sという導電性フィラメントです。写真は今年コロナ対策でタッチレスの機器が流行ったということで非接触の静電容量式センサーを作ってみた例です。右の丸いセンサー部と、上の白い紙基板にある抵抗体部分が造形品です。センサー部に手をかざすと反応してLEDが点灯する形になっています。

フィラメントはスプール巻きを作ることもできますが、今は多くはリフィルの形でご提供しています。Nature3Dのサイトでスプールの3Dデータをご提供しており、ユーザー様の方でスプールをプリントしてお使いいただく形をとっています。送料も安価で済み、スプールの廃棄がでないということでいいよねというお声をいただいています。個人で作っているため、他で買えるものを作っても意味が薄いとの考えから、オリジナルの特殊品に注力しています。難しいこともありますが、この特性を出す造形品を作るにはこのフィラメントしかないという唯一の商品になればというところを目指しています。


フィラメントを作るのに使っている装置とフィラメントを作っている様子もご紹介しました。左がFilabotWeeという組み立て式の押出機です。サイズは横が40cm、奥行き20cm、重さ約5kgほどの卓上サイズになります。比較的小さくて軽いので普段は棚にしまってあります。必要なときだけ持ち出して使っています。中央付近の四角い穴がホッパーと呼ばれるペレットを投入する部分、先端の銀色部分がヒーターです。この中にスクリューが通っています。

中央の写真が溶けた樹脂が押し出されるところです。下にセンサーがついており、樹脂が垂れさがってこのセンサが感知したらモーターでフィラメントを引き上げるON/OFF動作を行っています。単純ですがこのセンサーと口金の位置関係でどれだけ空冷のスパンをとり、どれだけフィラメントを引き伸ばすかを決めています。一般的にフィラメントの量産機ではフィラメント径に応じてフィードバックをかけて自動制御していますが、私のやり方では自動制御はなにもかけていません。フィードバックが掛からないので、フィラメントの径、バラツキはすべてセッティングで決まります。主にはセンサーとフィラメントの位置関係、押出の温度、スクリューの回転数、口金の径でフィラメント径とばらつきが決まってきます。このセッティングがフィラメントを作る上での腕の見せ所ということになります。

でてきたフィラメントは空中で冷却して搬送された後に巻き取られます。右の写真がフィラメントの巻取機です。フィラメントによりますが、最大300gほどを巻き取ることができます。写真はコイル巻きのセッティングになっていますが、パーツを変えることでスプール巻きにすることもできます。

普通にペレットを投入してフィラメントを作ることもできますが、他にもいろんなことができます。例えば顔料を入れてお好みで色を付ける。種類の異なる樹脂ペレットをブレンドして比率で物性を調整する、リサイクル材を投入してフィラメントを作る、といったことも可能です。


当日は短時間でお話ししたためかなり端折った形になってしまいましたが、お聞きいただいた方ありがとうございました。
詳しくはツイッターやサイトでも情報発信をやっています。普通のモノは作らず、少し変わった使いこなしをしようとしています。普通の材料では実現が難しい、何か3Dプリンタに新しい要素などをお求めであればぜひ一度ご覧ください。