2021/03/20 13:24


PLA樹脂は糖類の発酵によってできる乳酸を長くつなぐことで作られています。この乳酸をどのようにしてつなげるかでPLA樹脂の特性は大きく変わります。実は乳酸には2種類があります。L-乳酸というものとD-乳酸というもの。分子式としてみるとCH3CH(OH)COOHで同じですが、右手と左手みたいなもので重ね合わせることができません。光学異性体といわれるものです。


PLAをプラスチックとして使う場合はL-乳酸が主に使われます。L-乳酸だけをつないだものがPLLAです。分子鎖が整然と並ぶので結晶化しやすく、融点は180℃くらいになります。D-乳酸だけをつないだPDLAもありますが、プラスチックとしてみると特性がよくないのであまり用いられることはありません。


L-乳酸とD-乳酸をバラバラにつないだのが図の一番下のPLAコポリマーと書いてあるものです。バラバラにつなぐと分子の並びが乱されるため結晶化しにくくなり、D-乳酸の量があがるにつれ融点が下がります。D-乳酸の比率が10%を超えると結晶化しなくなり、融点はなくなります。D-乳酸を増やして完全に非晶となったPLAは柔らかい特性を持っており、ホットメルトやバインダー用の樹脂として使われていることもあります。

PLLAとPDLAを同じ長さにしてこよりのように絡めていくと、とても耐熱性のあるステレオコンプレックスPLAというものもできます。融点は230℃くらい。ステレオコンプレックスはPLAを高耐熱にするテーマとして長年研究されていますが、とても難易度が高く、いまだにパイロットスケールでしか作ることができないといわれています。

普段フィラメントなどで使っているPLAは、図でいうPLLAとPLAコポリマーの中間くらいのものです。D-乳酸の比率でいうと0.5%~4%くらい。融点は180℃~150℃ほどです。PLAの融点はよく170℃といわれますが、融点は1つに決まっているわけでなく、D-乳酸の比率によって変わります。

よくPLAの3Dプリント造形品のアニールは変形が大きく難しいといわれます。実はこの変形度合はD-乳酸の比率も関係します。D-乳酸の比率が低いほうがより短時間で結晶化するので、加熱中に軟化する時間が短くなり、アニールでのダレが少なくなるわけです。

PLA樹脂のL体とD体について

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