2022/04/15 21:32


3Dプリンタのスライサーで設定する線幅と、実際にプリントされる線幅はよく混同されます。上図でいうLine widthはスライサーで数値を入れて設定する線幅です。Actual line widthは実際にプリントされる線幅ですが、2つは同じではありません。なぜかというと、実際の線幅はフィラメント材質、ノズル径、積層ピッチ、温度、速度など条件やマシンセッティングで変わってくるからです。参考:FDM 3D Printing Parameters Optimization:The Key Role of Line Width

Actual line widthを変えるには、フィラメントを送り出す係数を微調整して合わせこむことになります。この係数はスライサーによって呼び方が異なりますが、Flow rateとか、Extrusion Mutiplierと言われています。例えばLine widthを0.4mmに調整したとき、スライサーはノズルの移動距離を0.4mmにして、計算上で空間を埋める分のフィラメントを送り出します。しかしそれはあくまで空間を埋めているつもりの話です。実際の線幅を0.4mmに調整してくれるわけではなく、多くの場合ズレが発生します。実際の線幅を合わせこむには、造形品の状態を見ながらFlow rateを調整していくことになります。

最初に設定して実際の線幅をバッチリ合わせれば、以降は問題にならないのでは?と思いたくなりますが、そうでもないのが難しいところです。実際の線幅はある特定の条件でしか合わせることができません。実際の造形では場所によってノズルは移動速度が違いますし、折り返し部分では細かく加減速を繰り返します。インフィルとペリメータなど壁際の狭いところを埋める時と、何もない広いところを埋める時では吐出圧も変わります。造形中ずっと同じ圧力を維持できているわけではないので、ダイスウェルが振られるわけです。どうしても実際の線幅は厳密に一定にはできず、わずかながら変動することになります。

このわずかな変動が造形外観に影響するわけですが、それをどう抑え込むかというのが腕の見せ所で、スライサー設定にノウハウがあったりします。もちろんプリンタ、ノズル、フィラメントといったところも大きく影響します。これらの積み上げが最終的な造形外観の差になって表れてくるというわけです。

もし興味があればこちらもどうぞ。スライサーの内部でフィラメント押出量はどう計算されているか?という話です。