2022/05/23 21:31


プラスチックには透明なものと不透明なものがあります。よくみかける透明なプラスチックはポリスチレン、ポリカーボネート、アクリルなどが代表的なものです。デザートのカップや弁当箱のフタはポリスチレン、街灯や自動車のライトカバーはポリカーボネートです。これらの樹脂は非晶性樹脂という分類になります。分子構造に規則性がないため、光が入ったときに材料の内部で光が散乱されません。入った光は乱されずに透過するため透明な材料として見えます。

一方で不透明なプラスチック製品もあります。ポリエチレン、ポリプロピレンが代表的なものです。タッパーなら容器の部分はポリプロピレン、フタはポリエチレンです。これらのプラスチックは結晶性樹脂という分類で、半透明だったり不透明だったりします。結晶性樹脂の内部構造は分子が折りたたまれて密になったカタマリの部分(結晶部分)と、分子に規則性のない部分(非晶部分)を含む形になっています。この結晶部分と非晶部分はそれぞれ屈折率が異なるため、材料の内部で光が乱反射します。そのために半透明や不透明な材料として見えることになります。

このように、プラスチック材料が透明か不透明かは内部の結晶構造が関係しています。ただしプラスチック製品には添加剤も配合されます。実際に透明になるか不透明になるかは添加剤なども関係します。例えば顔料です。透明なポリスチレンに赤の顔料を混ぜれば赤で着色されて不透明になります。ほかの樹脂が配合されている場合もそうです。透明なAS樹脂(アクリロニトリル・スチレン樹脂)にポリブタジエン樹脂を配合したポリマーアロイがABS樹脂です。ABSは非晶性樹脂ですが、AS樹脂とポリブタジエン樹脂の屈折率が異なるために不透明になります(参考:透明のABSフィラメントをあまり見かけない理由)。樹脂にフィラーを配合した場合や発泡成形した場合なども、同様に光が吸収されたり散乱するため不透明になります。

結晶性樹脂でも透明になる場合もあります。PETは結晶性樹脂ですが、PETフィルムやPETボトルなど製品として使われる際には透明な状態です。これは強度を高めるために延伸という処理をしていることによります。PET樹脂が溶融状態から冷えて固まる際に思い切り引っ張ると、一方向に伸びた結晶ができます。この結晶は微小なサイズで光を散乱させることがありません。そのためPETフィルムやPETボトルは透明になっています。結晶ができる前に固化することで透明になる場合もあります。PLA樹脂が代表的な例です。PLAは結晶ができる速度が遅く、射出成形では一般的には透明な成形品になりやすいですが、金型をゆっくり冷却すると結晶が成長して白い成形品ができます。