2022/05/29 19:26

今回は立体交差の鋳造にトライしました。普通の鋳型では実現できない形状です。以前から行っている鋳造は、基本的にはたい焼き型のモールドで、型を抜くことを考えると形状には制約があります。そこで発想を変え、薄い鋳型を作って湯を流し込み、鋳型を割って中身を取り出す形に変えてみることにしました。鋳型は一回だけしか使えませんが、その分格段に形状の自由度が出てきます。


これが今回の鋳型の形状です。3mmの円断面形状が結び目を作って立体交差しています。できるだけ一筆書きになるようにサポートをつけました。従来のたい焼き型モールドでは型の合わせ面からガスが抜けてくれましたが、今回の鋳型ではガスの逃げ場がありません。そこで、計6か所のガスの抜け穴を儲けました。ガスだけ逃がして湯はもれないという微妙なサイズが求められます。ガス抜き穴のデータ上の大きさは1mmとしました。実際の造形ではさらに小さい穴になります。


鋳造前の写真。グルーポットで溶かした低融点合金とアニール済の鋳型です。フィラメントはLFY3Mを使いました。薄い形状ですがアニール後でもほぼ反りはありません。


注湯直後。もれや割れは発生なし。ガス抜き穴からわずかに金属光沢が見えており、湯が回っていることが確認できます。ガス抜き穴から湯がもれるのではと心配していましたがうまくいきました。ちょうどいい穴径だったようです。左にある付着金属は注湯の際にこぼれたものです。




今回の鋳造は、いわばFFF造形版のシェルモールド鋳造です。砂は使っていませんが、アニール済PLAの薄い殻だけでできたシェル鋳型を鋳造後に壊して中身を取り出しています。データ上のシェルの厚みは1mmです。インフィルは0%でペラペラなので、積層に沿ってペーパーナイフを入れれば鋳型は簡単に外すことができます。今回は鋳造品の上面が少し荒れていました。造形の際、断面円形状の天面のオーバーハングがきつく、樹脂が垂れがそのまま転写されたようです。造形条件を調整するか、断面四角形状などにするなど工夫すればもう少し改善はできるかと思います。



湯口をカットして研磨して仕上げた完成品。鋳型の積層がきれいに鋳造品に転写しています。

STLデータは下記にアップロードしてあります。興味があれば見てみてください。

3D Shell Mold Casting (Trefoil knot)