2022/06/16 21:31


よくPLAフィラメントの紹介で、PLA樹脂の融点は170℃だと書かれていることがあります。そのためPLA樹脂はどれでも融点は170℃だと思われることがありますが、実はPLA樹脂の融点は150~180℃付近まで幅が広いです。中には融点がないPLAもあります。PLAポリマーはL乳酸が長くつながってできた重合体ですが、ほんの少しだけD乳酸という向きの違う乳酸が含まれています。PLA樹脂の融点は、PLAポリマーの中にD乳酸が含まれる割合(D体比率)で決まります(参考:PLA樹脂のL体とD体についてPLAはどんな樹脂なのか、改めて少し簡単に)。



図はNatureWorksというメーカーのPLA樹脂について、DSC熱分析を行った結果です。2003D, 4032D, 4060Dという3つのグレードで測定しています。Tgはガラス転移点、Tccは結晶化温度、Tmが融点です。Xcはそれぞれの樹脂をフィルムに加工した際の結晶化度ですが、詳細は論文を参照ください。各樹脂のD体比率は2003D (4.3%)、4032D(1.4%)、4060D(12%)となっています。D体比率は大きいほどPLA樹脂の融点は下がり、10%を超えると融点はなくなることが知られています。DSCの結果でもこの傾向が見て取れます。2003Dは融点150℃で、4032Dは融点169.1℃です。4060Dはガラス転移点があるだけで、これより高い温度域では何も変化がありません。融点が存在しないことがわかります。

PLA樹脂のD体比率は低いほど硬くなり、よりプラスチックとしての特性に近くなります。反対にD体比率が高いほど柔らかくなり、ホットメルト接着剤やバインダーといった感じの特性に近くなっていきます。2003Dは押出用グレードで、3Dプリンタフィラメントでもよく使われます。4032Dは二軸延伸用途の高耐熱フィルム用です。4060Dは主にフィルムのヒートシール用途として使われる軟質の樹脂となっています。