2023/02/15 23:30


フィラメントは製造工程中で冷却水槽に浸けられ、途中の仕掛かりで大気にさらされ、脱気梱包した後も出荷までの保管でゆっくり透湿するということは過去にもご紹介しました。

では購入したフィラメントは手元に届いた時点でどれだけ吸湿しているのでしょうか。実際に数字で見てみることにしましょう。

◆メーカー別の比較
3つの異なるメーカーから購入したABSフィラメントの吸水率の結果です。バラツキのレンジも含めると実測データで0.18~0.40%、平均だとだいたい0.25~0.30%程度吸湿していることがわかります。3つのメーカーとも標準的なスプール巻き+脱気梱包です。測定は開封直後に、湿度 52 ~ 54% の環境で実施されたものです。メーカーによって違いがありますが、これはメーカーの成分や配合の比率、梱包方法、吸湿に対する工程管理、在庫保管期間などの違いによるものと推測されます。


◆1つのメーカーでのロット別の比較
1つのメーカーに対してロットの異なる8つのABSフィラメントに対して吸水率を測定した結果です。それぞれスプール内で場所を変えて (巻外、巻内、巻芯) サンプリングされています。吸水率は 0.23 ~ 0.40%とバラつきがありますが、このバラツキはフィラメントの位置、材料組成のバラつき、製造工程上のバラつきなどが複合的に作用している可能性が考えられます。


一般的な成形加工において、ABS樹脂で良好な成形品を得るためにはペレットの吸水率は0.1%以下、望ましくは0.05%以下にする必要があるとされています。

3Dプリンタと一般的な成形加工ではもちろん求められる吸水率のレベルが異なりますが、フィラメントは購入してから手元に届いた時点で、すでに成形加工では異常が出るレベルの水を含んでいるということになります。フィラメントは封を切っていないから問題ないはずという認識は必ずしも正しいとは限りません。必要に応じて乾燥をかけるなどユーザー側でも管理が必要だと思われます。

ヘッダー画像