2023/08/25 11:55

Nature3Dは10月に開催される、ふじのくにセルロース循環経済国際展示会に出展いたします。

日時 : 2023年10月2日(月)13時~16時、10月3日(火)9時~15時
場所 : 富士市産業交流展示場「ふじさんめっせ」(静岡県富士市柳島189ー8)
URL : https://fujinokuni-cnf.com/ (ご来場には事前登録が必要です)


今回は高生分解性酢酸セルロース樹脂の3D用フィラメントと造形品を展示します。土壌中/海洋中とも分解が進み環境問題の面で期待されている素材です。ぜひお越し下さい!

以下、今回展示の資料を使って酢酸セルロースフィラメントのご紹介をさせていただきます。


こちらが今回出展する酢酸セルロースフィラメントC38Pです。高い生分解性を持つ造形品が得られます。材料は安全性の高い成分のみで構成されています。研磨加工性が良好で、アセトンで部品どうしの融着が可能という特徴もあります。比較的吸湿性が高い材料であるため、乾燥や防湿ケースなど吸湿対策をとった上でのプリントを推奨しています。

酢酸セルロース樹脂の特徴は、①高い生分解性(土壌中、海洋中とも分解が進む)、②高い安全性(有害な物質を含まない)、③高い抗菌性(酢酸による永続的かつ高い抗菌性)で、環境に配慮した特性を持った樹脂となっています。


樹脂は環境の面から言うと、大きく生分解性樹脂と非生分解性樹脂に分かれます。非生分解性樹脂は一般に身の回りのプラスチック製品で使われる樹脂で、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などがあります。これらの樹脂は生分解性がないため、一旦自然環境に流出すると基本的に分解が進まないと考えられています。

これに対して生分解性樹脂は自然環境中で分解されていく特性を持っています。ただし生分解のされやすさには違いがあり、どの生分解性樹脂でもすみやかに分解が進むわけではありません。中でもPLA(ポリ乳酸)は比較的生分解が遅い方で、主に高温高湿環境で分解が進む樹脂です。積極的な分解促進には、コンポストなどのような発酵熱がおきる環境を作る必要があると考えられています。

次に分解が速いのがPBS(ポリブチレンサクシネート)などに代表される酵素分解型樹脂です。これらは土壌中に含まれる酵素によって分解が進みます。畑の土にすき込むことで分解するため、農業用マルチフィルムによく用いられます。ですが海洋中では分解酵素が少なく、分解速度は遅くなると考えられています。

今回の酢酸セルロースは数ある生分解性プラスチックの中で最も生分解性が高いもののひとつで、土壌中、海洋中どちらでも分解が進む樹脂です。海洋生分解性プラスチックの一つとして注目されており、今後の普及が期待されています。


酢酸セルロース樹脂は、酢酸セルロースという粉状の物質と、可塑剤という液体を練り合わせて作られたものです。酢酸セルロース自体は溶融した時に可塑性が乏しく、単体では成形に向きません。そのため可塑剤を添加することで、溶かしたときに流動性を持つプラスチックとして使うことができるようになります。

酢酸セルロースは植物由来のセルロースと、酢の主成分である酢酸が原料であり、高生分解性の環境にやさしい素材です。よくご存じの方の中には、可塑剤についてあまりよくないイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。可塑剤は塩化ビニル樹脂でも用いられている材料です。その中のいくつかには環境ホルモン問題につながるのではと懸念されているものがあり、フタル酸系可塑剤は欧州では使用が規制されているものもあります。

それに対して、今回の酢酸セルロース樹脂で使われている可塑剤は非フタル酸系であり、食品添加物としても使われる安全性の高いものです。さらに可塑剤も生分解する特徴があります。酢酸セルロースと可塑剤、どちらも安全性が高く、生分解する材料が使われているというのが今回の酢酸セルロース樹脂の特徴の一つとなっています。


こちらが酢酸セルロース樹脂の抗菌性試験の結果です。抗菌性試験とはある素材のシートの上で所定の菌を培養し、できたコロニーの数で抗菌性の度合いを確認する試験です。画像は大腸菌での試験で、左がポリプロピレン樹脂、右が酢酸セルロース樹脂の結果です。ポリプロピレン樹脂にコロニーが多数できているのに対し、酢酸セルロース樹脂ではコロニーはなく、酢酸セルロース樹脂は高い抗菌性を持っていることがよくわかる結果となっています。

酢酸セルロース樹脂の抗菌性は酢酸からきています。酢酸は酢の主成分で、抗菌性があることはよく知られています。酢酸セルロース樹脂には酢酸が含まれているため、その造形品も抗菌性を持つことになります。抗菌性は樹脂自体の特性であり、造形品は酢酸で絶えず覆われている形となるため、抗菌効果は永続的に保持されます。

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