2023/08/25 12:54

ふじのくにセルロース循環経済国際展示会 出展時の資料です。前のページはこちら

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近年プラスチックゴミ問題が大きくクローズアップされており、以下のようなことが問題視されています。

①プラスチック製品の分解にはきわめて長い年月を要する、②プラスチック製品は劣化で細かい破片になりマイクロプラスチックとして残り続ける、③マイクロプラスチックは海洋生物に取り込まれることで生態系への悪影響が懸念される

海外ではプラスチックゴミ対策が先行しており、欧米を中心に使い捨てプラスチック製品の使用規制や代替製品への置き換えが進んでいる国もあります。日本でもゴミ排出量は増える一方で、プラスチックゴミ対策は喫緊の課題です。官民による戦略も相次いで打ち出されており、世の中のプラスチック素材に対する認識は大きく変わろうとしています。 そのような状況の中、海洋生分解性素材がアイテムの一つとして注目を集めており、早期の社会実装が求められています。


こちらが酢酸セルロースでの3Dプリント例です。自然環境への流出が想定される用途、回収が困難な用途への適用が考えられます。漁業や農業はプラスチックごみ流出源の一つでもあるといわれますが、画像は漁具として浮きとルアー、農業用資材として徐放性容器(内容物をゆっくり溶出させるもの。害虫忌避剤(ハーブ類)や肥料など)とシート固定用ピン(生分解性マルチシートなどの固定)を造形したものです。

3Dプリンタであれば、思いついた形状やアイデアをすぐ試すことができます。海洋生分解性素材は工業的にはまだごく限られた用途にしか適用されておらず、しかもユーザー側としては作られた製品としての形でしか手にすることはできません。3Dプリンタと海洋生分解性素材の組み合わせによって、実現できることをユーザー側で考え、自由にアレンジして実際に試すことができます。このような環境をフィラメントを通してご提供できることには意義があるのではないかと考えています。


酢酸セルロースの造形品が実際に分解していく様子を実地テストで継続確認しています。造形した50 x 50 x 2mmの板状試験片を屋外土壌中(砂地花壇)に埋め、どのように変化していくか経過を確認したものです。3か月で程度で変化が起き始め、積層がはがれてバラバラになっていく様子がわかります。外観変化だけでなく重量減少も伴っており、18か月後のサンプルでは約25%の重量減少が起きています。今回の土壌は砂地ですが、このような土壌でも分解が進んでいくことが確認できています。


各種製品が分解に必要な年数は、昔から様々な調査報告が行われています。具体的な年数は文献によって異なりますが、プラスチック製品の分解には数百年から数十年はかかると考えられています。上記の例では一番長いものが釣り糸で600年、ペットボトルは450年、ポリ袋でも20年程度です。これに対して酢酸セルロースは3年程度で分解する素材で、ウールや木材などと同じレベルの分解性となります。


今回の酢酸セルロースフィラメントC38Pは2023年3月にプレスリリースさせていただき、大きな反響をいただいております。

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