2023/08/25 13:29

ふじのくにセルロース循環経済国際展示会 出展時の資料です。前のページはこちら

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こちらが酢酸セルロースフィラメントを着色した例です。生分解性を阻害しないよう、安全性の高い天然由来の顔料で着色しています。今回はべんがら、黄土、藍などで着色した造形品を展示させていただきます。


これまで酢酸セルロースで様々な3Dプリント検討を行ってきておりますが、より多様な造形を行うためにはまだ課題も残っています。最も大きいのは高Tgに起因する問題の対応です。Tg とは ガラス転移温度のことで、Tg以下では分子拡散が停止します。

3DプリントにおけるTgの影響はさまざまな面に現れますが、もっとも大きい要因の一つが樹脂の溶け込みです。今回の酢酸セルロース樹脂のTgは約100℃ですが、単純に考えるとノズルから樹脂が出てきて100℃以下に冷えた時にビードの溶け込みがストップするということになります。3Dプリントの際には樹脂定着後に早い段階から固化が起き、溶け込みが不足しがちな傾向があります。場合によっては強度不足、反り、3Dモデル形状の制約など造形難易度の高さにつながることもあり、このあたりが酢酸セルロースフィラメントを中・上級者向けとしてご案内している理由となっています。

これらはABS樹脂などTgが高い樹脂での3Dプリントと同様の問題です。対応策としては、アニーリング(加熱処理)や溶剤塗布/浸漬など後処理で樹脂の溶け込みを補う方法、非相容高分子成分を添加してビード表層付近のTgを低下させ、造形時の溶け込みを補うような相分離構造などが案として考えられます。まだ酢酸セルロース樹脂は3Dプリンタへ適用されはじめてから日が浅く、解明できていない部分も多いというのが実情です。現在もプロセスと樹脂の両面から、さらなる改善検討を行っています。


今回の酢酸セルロースフィラメントについてはものづくりイベントNT高の原2023にも出展し、酢酸セルロースでパズルを造形して展示をさせていただきました。実際に造形品に触れて親しんでいただくことで、多くの方に生分解性プラスチックについて知っていただきました。


Nature3Dでは廃棄物削減として主にスプールがないリフィル式のフィラメントを製造しております。スプールはユーザー様でプリントしフィラメントコイルを装填して使用いただく形です(スプールの3Dデータは無償公開)。フィラメントは防湿アルミ袋にてパッキングを行っています。廃棄物削減だけでなく資材・物流コストが削減でき、長期保管が可能になるというメリットもあります。


Nature3Dではフィラメントだけでなく、生分解性樹脂をはじめとした樹脂の小売販売も行っています。生分解性樹脂はPLAPBSPBAT酢酸セルロースを扱っており、500gからご購入いただけます。一度生分解性樹脂を試してみたいけど25kg単位は量が多すぎるというユーザー様は多く、企業様や大学様より多数のお引き合いをいただいております。酢酸セルロースでの3Dプリントもご相談を承っておりますので、ぜひお問い合わせください。