2023/12/13 18:06

酢酸セルロースの造形品は比較的強度が弱めになってしまいます。強度は積層ピッチを小さくすることである程度補えますが、ガラス転移点が割と高め(C38Pの場合Tg=100℃)なので、どうしても原理的には造形条件だけで調整することには限界もあります。

後処理として強度を高める一つの方法が溶剤塗布です。造形品に酢酸セルロースを溶かす溶剤を塗ることで、造形時に不十分となった積層間の溶け込みを補おうという考え方です。

アセトンは酢酸セルロース樹脂の代表的な溶剤ですが、揮発がとても速いです。もちろんアセトンを塗布することでも効果があるのですが、すぐに揮発してしまい、造形品内部には浸透しにくくなってしまいます。

そこで揮発速度を遅くする溶剤がないかということになりますが、簡単に入手でき、かつ効果がある溶剤がエタノールです。エタノールは酢酸セルロース樹脂を直接溶かすことはできませんが、アセトンと混合した場合は助溶剤として働きます。重量比でアセトン2 : エタノール1とした混合溶剤でも酢酸セルロース樹脂を溶かすことができることがわかっています(酢酸セルロース塗料の揮発を遅くする実験)。

アセトン2 : エタノール1の混合溶剤を造形品に塗布すると揮発が遅くなるため、比較的内部まで浸透しやすくなり、造形品の強度を上げてくれます。第二種有機溶剤であるアセトンを1/3減らすことができるため、作業の際の安全性も高くなります。3Dプリント造形品は欠陥が多いポーラスな構造であることが知られていますが、これを逆手にとった方法です。