2024/03/10 13:19


酢酸セルロース造形ルアーに、さらに生分解集魚用塗料のコーティングを行いました。


これが今回作った生分解集魚用塗料です。酢酸セルロース樹脂の溶液にイワシ油を添加してあります。イワシ油は、イワシから抽出した臭気の強い油です。撒き餌に混ぜると食いつきがよくなるということで、釣り用の集魚剤としてよく用いられます。


溶液の状態では溶剤臭のみで、ほとんどイワシの臭気はありません。


試しに、厚紙に筆で塗布した様子です。三回重ね塗りしました。酢酸セルロース樹脂とイワシ油が分離している様子はありません。溶液の状態では黄色味がありますが、塗布後は薄膜になるため無色透明になります。


指で触ってもべたつきはありません。イワシ油は酢酸セルロース樹脂の可塑剤になっており、樹脂中に取り込まれているものと考えられます。


造形品に塗布してみます。できるだけ容器の中で液を落として薄塗り・重ね塗りするとよいようです。あまりに液をたっぷりつけて厚く塗ると、揮発速度の関係から部分的にゲル状になることがあります。


三回ほど重ね塗り。これで生分解集魚用塗料の酢酸セルロース造形ルアーができました。ルアーも塗料もすべて生分解します。有害成分は含んでいないので、ロストした際の環境影響も小さそうです。


ルアーの状態でも同じくべたつきはありません。塗布後はイワシ油のにおいがします。それほどキツい臭気ではないので、保管に困るということもないかと思います。

イワシ油は可塑剤になっているとすれば、おそらく時間をかけて表面にブリードアウトして水に溶け出し、次第になくなっていくことが考えられます。効果がなくなったら再度塗りなおすということも簡単にできそうです。

今回は簡単に三回塗りにしましたが、感覚的には一回当たりの塗膜の膜厚はおそらく数μm程度で、極薄の膜だと思われます。膜厚が薄いとイワシ油を蓄えられる量が少ないため、集魚効果を高めるにはもっと重ね塗り回数を増やして膜厚を稼ぐ必要があるかもしれません。


試しに水で軽く洗ってみました。強烈ではありませんが、洗った後もイワシ臭は維持されています。他にも塗るタイプの集魚剤はありますが、塗料ではないためすぐに流れ出して効果がなくなってしまいます。塗料なら効果が長期間持続できることが期待されます。


塗り終えた筆は溶液をふき取って、アセトンで洗うとクリーンな状態を維持できます。

今回は酢酸セルロース造形品に対して塗布しましたが、PLA造形ルアー、市販ルアー、他の漁具への適用も可能かもしれません。塗布方法もエアブラシやディップで使えるとさらに用途の幅が広がりそうです。