2024/07/04 10:03



140℃耐熱PLAフィラメントは、当方ショップのフィラメントで最もご利用をいただいています。表示上は耐熱材として記載していますが、造形外観もきれいに出るというご評価が多いです。耐熱工業用途としての性格と、高精細造形用としての性格、両方を併せ持っためずらしい材料となっています。なぜこのような特性が生み出せるか、材料の視点からご紹介します。

140℃耐熱PLAフィラメントには扁平状の無機粒子がフィラーとして添加されています。このフィラーが高濃度に添加されることで、下記のような特性を得ることが可能になっています。

低収縮
FFF式の造形ではポリマ―鎖が引き延ばされ、それが回復しようとするためにXY方向に収縮が大きくなりがちです。これは造形品のひずみにつながります。140℃耐熱PLAフィラメントでは添加されているフィラーが扁平状のため、XY方向の収縮を食い止める役割を果たします。これにより収縮を最小限にすることができます。

低吸水
フィラーが非吸水かつ扁平状であることから、フィラメント自体に水蒸気を通しにくいガスバリア機能を持っています。造形時には溶融樹脂から水蒸気ガスが多量に発生しますが、低吸水であることからビードの発泡やノズル内圧力変動などが起きにくくなります。これは造形安定性に寄与します。

低ダイスウェル
フィラー添加により、ノズル通過で高い圧力を受けた際のポリマー鎖形状変化が起きにくくなり、ダイスウェルが起きにくくなります。一般的にはスライサーによる速度変化が起きた場合や、狭いすき間を埋めるような場合には圧力変化からくるダイスウェルが起きやすくなり、吐出線幅にムラが発生しやすいですが、ダイスウェルの安定により線幅が一定になりやすく、造形外観がみだれにくくなります。

低ダレ
フィラーの効果により溶融ビードのダレが生じにくく、キツめのオーバーハングにも対応できます。

3Dプリンタ向きの流動特性
使われているフィラーは高濃度に添加しても溶融時の流動特性が低下しにくい特性があります。小さい力でも軽く樹脂を押し出すことができるため、3Dプリンタに適しています。

表面平滑性
造形安定化のためにCF(炭素繊維)やGF(ガラス繊維)が添加された市販フィラメントもあります。これらのフィラメントは硬い繊維が表面に飛び出す傾向があり、表面がガサガサになりやすいです。それに対して140℃耐熱PLAフィラメントのフィラーは扁平状で摩擦係数も小さいため、非常に表面が滑らかになります。

サポート除去が容易
ビードの表面がなめらかになるため、サポート除去が容易で、除去面もきれいに仕上がります。

研磨が容易
添加されているフィラーはパテとしてもよく使用されている材料で、造形品の研磨性が良好です。

アニール結晶化および高耐熱
添加されているフィラーはPLAの結晶核剤として働く特性があります。そのため、結晶化が非常に短時間で終了し、加熱時の軟化からくる熱変形を最小限に抑えることができます。結晶化したPLAは耐熱性がガラス転移点に左右されなくなるため耐熱性が高くなります。

低残留応力
造形時には低収縮かつ低吸水で、もともと残留応力が小さくなります。さらにアニールで結晶化させれば、残留応力は熱時の高分子鎖の動きで解放され、より信頼性の高い造形品を得ることができます。

高強度
造形時はビード間の分子拡散が十分に起こらないため、結合強度が不足しがちですが、アニールにおいて、ゆっくりと時間をかけて分子拡散させることが可能になります。これにより結合強度を高めることができます。