2022/08/05 19:54


2022/8/5に実施されました、日本3Dプリンティング産業技術協会主催のサステナビリティと3Dプリンティング2022にNature3Dが登壇し、「生分解樹脂・バイオマス素材を中心とした3Dプリンター用特殊フィラメント」というタイトルでお話をさせていただきました。その時の資料とお話した内容を掲載いたします。

サステナビリティと3Dプリンティング2022 Nature3D登壇資料

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ただいまご紹介にあずかりました、Nature3Dの伊藤と申します。本日は日程の関係で直接の出席ができないため、事前に録画したものをご覧いただく形でのご説明とさせていただきます。ご了承のほどよろしくお願いいたします。それでは「生分解樹脂・バイオマス素材を中心とした3Dプリンター用特殊フィラメント」というタイトルでお話をさせていただきます。


本日の内容です。Nature3Dについて、フィラメント製造について、フィラメントのご紹介という流れでお話をさせていただきます。


まず最初に、Nature3Dについて簡単に説明をさせていただきます。「屋号名 Nature3D」とありますが、「屋号」という通り、Nature3Dは個人事業という形をとっております。主な内容としては2つありまして、1つ目は3Dプリンタ用特殊フィラメント開発と販売、もう1つはプラスチックの成形材料の小売販売を行っています。どちらも生分解性樹脂、バイオマス素材を中心としたものを扱っております。基本的には特殊な材料を少量で扱うスタイルとなっておりまして、個人様・法人様問わず、幅広くご利用いただいております。当初は公開することは考えずにフィラメントを作っておりましたが、フィラメントをご評価いただき、お話を伺っていく中で一定程度の需要が見込まれたことから、原料としても、サステナブルなものを扱う実験的なブランドとしてNature3Dという名前を付けて活動を開始した、というのが設立の流れとなっております。現在は当方一名、自己資本のみで運営を行っております。


こちらが活動の内容をまとめたものです。フィラメント開発製造、販売情報発信と分けて書いております。中心となっているのはフィラメントの開発で、上2つの写真がフィラメントを作っている様子です。押出機から出てきた樹脂を冷却し、所定の径に合わせこんで巻き取ります。この後にもご覧いただきますが、非常に簡単な単軸押出機、周辺機器でフィラメントの加工を行っております。これはラボ機のようなもので、生産できるのはごく少量です。大きな生産キャパはありませんが、その代わり小規模であることのメリットをできるだけ活かした開発を行っております。小規模ではありますが、原料からフィラメントを作り、フィラメントから造形品を作り、さらにその造形品を使った応用品までを作ることまでが可能で、川上から川下まで、基本的にはほとんどが手元にある環境で扱うことができます。そのために、造形面だけでなく、材料処方面のアレンジも含めたラピッドプロトタイピングが可能です。一般的には原料、フィラメント加工、造形というのは分野や考え方が分かれがちですが、Nature3Dでは一貫した視点で開発が可能だというのが特徴です。製造したフィラメントは直営のネットショップで販売を行っております。ショップでは特殊フィラメントのみを取り扱い、他にはない製品をラインナップしております。また、原料として扱っております生分解性樹脂の小売も行っております。試作や開発検討など少しだけ欲しいというニーズ、近日中にすぐ欲しいというニーズにお応えできるということで、ご好評をいただいております。他にもNature3Dの検討内容や造形に関する文献のご紹介など、サイトで情報発信をさせていただいており、日々多くのアクセスをいただいています。Nature3Dには工場・オフィス・量産用装置がありません。そのため固定費のかからない運営、少量ながら需要があるニッチ領域を目指すという方向性で運営を行っております。


こちらがフィラメント製造に使っている装置一式になります。パッと見ていただいてわかると思いますが、本当に簡単な装置だけで構成されています。まず右上にある大きいものがフィラメント押出機です。市販されているキット式の押出機を改造したものになります。樹脂吐出量はカタログ上は最大1kg/Hです。中央付近にフタがついていますが、ここが樹脂原料を投入するホッパーです。先端付近の太くなっている銀色の部分がヒーターです。先端にはボルトを加工した金型がついております。金型はNature3Dで設計したもので、40種類近いバリエーションがあり、扱う樹脂によって使い分けています。出てきた樹脂は左下にある引き取りユニットでニップして搬送されます。このユニットにはダイヤルゲージがついておりフィラメント径のインライン測定ができます。このニップのモーターを動かすためのセンサが載っているのがセンサユニットで、これが押出機の金型の直後に取り付けられます。右下にあるのがフィラメントの巻取機です。十字になった部分が見えておりますけれども、これは3Dプリント品となっておりまして、巻きの形態に応じてコマを組み替えて使うことができるようになっています。写真はフィラメントをコイルで巻き取るタイプのセッティングです。スプールを装着して巻き取ることもできるようになっています。この巻取機は樹脂の比重にもよりますが、最大約200gほどを巻き取ることができます。


フィラメントをどう作っているかというのを書いた図です。いろいろ書いてありますけれども、基本的には単純なON-OFF制御だけで動いています。押出機の金型の先にセットしたユニットのセンサが感知すると後段にある駆動モーターを動かしに行きます。押し出されて樹脂が下がってきたら駆動モーターを動かして引き取り、また、下がってきたら引き取るという動作を繰り返してフィラメントが搬送されていきます。巻取りも同様で、フィラメントがセンサにかかったらモーターを動かし、またセンサにかかったらモーターを動かすという動作を繰り返してフィラメントを巻き取ります。仕組み上で、一般的に使われているフィラメント量産ラインと大きく違う点は、フィラメント径の自動制御です。量産ラインはよく光学式のインライン測定器から駆動モーターにフィードバックをかけてフィラメント径を自動制御していますが、この構成にはフィラメント径の自動制御機能がありません。この構成では、フィラメント径とバラツキは金型、ヒーターの温度、樹脂が押し出されてからの引き落とし率、スクリュー回転数などで調整しています。装置構成は簡単な分、難易度は高めです。立ち上げからパスラインを通してフィラメント径を安定させ、巻き取るまでの調整ロスをいかに少なくするかがポイントになってきます。巻き上がったフィラメントは吸湿を防ぐため、仕掛かりを作らずに順次防湿梱包を行うという対応を行っています。