2022/08/05 19:54

2022/8/5に実施されました、日本3Dプリンティング産業技術協会主催のサステナビリティと3Dプリンティング2022にNature3Dが登壇し、「生分解樹脂・バイオマス素材を中心とした3Dプリンター用特殊フィラメント」というタイトルでお話をさせていただきました。その時の資料とお話した内容を掲載いたします。


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次が酢酸セルロースのフィラメントです。酢酸セルロースという樹脂は100年以上も歴史があるというかなり古い樹脂ですが、従来の生分解性樹脂よりも高い生分解性を持つとして、ここ数年で見直されてきています。このC38TSフィラメントは素材をご提供いただきました株式会社ネクアス様と共同で昨年9月にプレスリリースを出させていただき、大きな反響をいただきました。酢酸セルロースは、植物由来のセルロースと酢酸が原料となっております。また、木材や紙と同じような生分解性がありまして、自然環境中で分解するというのが特徴です。他の原料としても、自然や動植物への環境影響がないことが確認されている、安全性の高い原料のみを配合しております。


こちらはC38TSを構成している材料についての説明です。C38TSは3つの材料のコンポジット材となっております。上が酢酸セルロースです。先ほども申し上げましたが、酢酸セルロースは生分解性が高く、土壌中・海洋中どちらでも分解が進むという特徴があります。2つ目が可塑剤です。食品添加物としても使われる安全性の高いもので、フタル酸フリーのものを使用しております。一般的な酢酸セルロース樹脂は可塑剤の生分解性が確認されていないものが使われていることがありますが、C38TSは可塑剤も生分解するというのが特徴となっております。3つ目はミネラルです。PLAフィラメントでもミネラル添加というものをご紹介しましたが、酢酸セルロースでも同様に材料の吸湿性を下げてくれる役割があるほか、軟質であるためノズル摩耗が小さいという特徴もあります。マトリックスになっているベースの樹脂が分解した後も、このミネラル分は残りますが、このミネラルは天然鉱物そのものであり、有害物質溶出がありません。ミネラル分は長い年月をかけて地層の一部になると考えられています。


こちらは酢酸セルロースの分解が進んでいく様子をまとめたもので、現在新規で検討している酢酸セルロースフィラメントについてのデータです。上のような50x50x2mmのサンプルを造形し、屋外の好気性土壌、花壇に埋設を行って外観と重量変化を確認しております。グラフは横軸が埋設開始からの日数、縦軸はサンプルの重量変化率を示しています。あくまで重量変化ですので、開発段階のおおまかな評価ということになりますが、数値が低いほど分解が進んでいることを表しています。写真は上のものが初期の写真、右下が埋設してから151日後の写真です。151日経過後のサンプルは積層がかなりはがれてきておりまして、大きく変形していていることが確認できます。重量は151日で約16%程度減少しており、分解が進んでいる様子が確認できます。こちらについては現在も継続してデータを取っております。


これまでご紹介した中でご覧いただいてきましたが、一部を除いてNature3Dではリフィル式のフィラメントを製造しております。スプールはNature3Dが無償で公開している3Dデータがあり、このデータを基に各ユーザー様で造形いただいて、フィラメントコイルをはめ込んで使用いただくという形を取っております。フィラメントは左下にありますように防湿アルミ袋にてパッキングし、簡易包装としております。スプールをはじめとする廃棄物削減、スプールの資材コスト、物流コストが削減できるほか、アルミ袋を使うことでフィラメントの吸湿劣化が少なくなり、常にフレッシュな状態で使用できることと、大幅に長期保管が可能となるメリットがあります。

最後となりますが、情報発信についてご説明します。現在Nature3Dでは複数のメディアを使って情報発信を行っております。Nature3Dメインサイトでは主に樹脂材料や文献を基にした技術情報の発信を行っており、アーカイブに近い機能を持たせております。Nature3Dショップでは製品の販売と、付帯ブログで検討の記録や補足的なテーマの発信、ツイッターは総合案内所として、それぞれ違った切り口で発信を行っております。3Dプリンタを業務でご使用の方、ホビーユースでご使用の方、両方にリーチできるような運営を目指しておりますので、もしご興味がありましたらアクセスをいただければと思います。


ご説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。